大江戸ロミオ&ジュリエット
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おさよにとうとう初潮がやってきた。

もう下働きではいられない。

一刻も早く父親に支払われた負い目を、文字どおり我が身一つで返していかねばならぬ。
こうしているうちにも高利がどんどん嵩んでいるのだ。

いよいよ、十年に及ぶ「年季奉公」が始まる。

振袖新造の道を絶たれた女郎は、初めは「部屋持ち」にもなれない。

つまり、二階にある個室が与えられないため、一階の「廻し部屋」という大部屋で客を取ることになる。

同じ部屋の中に仕切られた屏風の向こう側では、別の女郎が別の客を相手にしている。
もちろん、張見世(はりみせ)に座って客引きせねば客はつかぬ。

また、客が初会、裏、三会、と三度通って「馴染(なじ)み」にならないと「床入れ」できぬというのは二階の「遊女」たちの話である。

一階の廻し部屋の安い女郎たちは初会であろうと、身体(からだ)をひらく。
客は決まった(とき)が過ぎれば帰らされるため、女郎はまた張見世に出ねばならぬ。

ゆえに、一晩で何人もの客を相手にした。

それは、いくら大見世であろうと同じだった。
安価な客は数で稼がねば、いくら大見世でもやっていけないからだ。

(いや)ならば、二階へ上がって部屋を持つ「遊女」にのし上がるしかない。

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