大江戸ロミオ&ジュリエット
◆◇ 八段目 ◇◆
◇来今の場◇
ある日、志鶴にまた、思いがけない人が訪ねてきた。
多聞の姉の寿々乃だった。
志鶴とは初対面だ。
多聞と志鶴の祝言のとき、寿々乃は二人目の子を産んだばかりで産後の肥立ち悪しく、参列できなかったゆえだ。
姑の富士に似た気性ならば、気が重い。
志鶴は腹に力を入れて、寿々乃の待つ座敷へ向かった。
「……義姉上様、お待たせして申し訳ありませぬ」
座敷に入った志鶴は、深々と一礼した。
そして、顔を上げて、初めて義姉の顔を見て、息を飲んだ。