大江戸ロミオ&ジュリエット
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


数日後、北町の佐久間の家から使いの者がやってきた。実家(さと)の母、志代の身体(からだ)の具合がよくないと云う。

婚家に使いを出すのはよほどのことであろうと、夫の多聞も舅の源兵衛も、志鶴に早く帰るよう促した。

だが、志鶴は、

「どうせ、夏負けでござりましょう。毎年のことにてござりまする。それに、嫁入って半年も経たぬうちに、実家へなぞ戻れませぬ」

と、強情を張った。

しかし、実家からは駕籠(かご)までやってきていた。

多聞は(なだ)めすかしたあと、ようやく志鶴を駕籠に乗せて送り出すことができた。

< 221 / 389 >

この作品をシェア

pagetop