大江戸ロミオ&ジュリエット

「た…多聞さまは御家(おいえ)のために、奥方様と夫婦(めおと)になりなんした。ゆ…ゆえに、奥方様のわかっとられる多聞さまは、お武家様の多聞さまでありんす……されど」

梅ノ香は震える声を励まして云った。
「吉原の女郎の心意気」だけが、梅ノ香の味方だった。


「お武家様でない生身の多聞さまを、一番(いっち)わかっとるんは……わっちなんし」

< 234 / 389 >

この作品をシェア

pagetop