大江戸ロミオ&ジュリエット

「……実家(さと)はどうだったんでぃ」

多聞がそう話しかけながら、夜着に包まれた志鶴ごと抱きしめてきた。

「まさか……おっ()さんの具合が思いの(ほか)()りぃのか」

多聞の声が心配げに曇る。

実家の方は、母も含めてつつがなきことを尚之介から聞き及んでいた。

……あぁ、胸の奥の、ふつふつ、が()まぬ。

心配(しんぺぇ)だったら、しばらく実家に()ぇってもいいんだぜ」

顔を隠した夜着の下で、志鶴の眉間にぐっ、としわが寄った。

……わたくしを実家に戻して、梅ノ香と逢うおつもりか。

心の臓が、ぎりりっ、と音を立てた。

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