大江戸ロミオ&ジュリエット
「ふつふつ」は「沸々」であった。
志鶴の「沸々」は、怒りだったのだ。
しかも、湯がぐらぐらと滾るがごとく熱いものであった。
幼き頃より「武家の娘」として、心に波風立てずに生きてきた。まさか、おのれが、かような生臭い思いを抱くとは夢にも思わなかった。
だが、確かに、志鶴は怒っていた。
それも、多聞と梅ノ香に。
そして、それは、紛れもなく、
……「悋気」というものであった。