大江戸ロミオ&ジュリエット
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明くる日、多聞と志鶴は外に出かけた。多聞の藍鼠(あいねず)色の(ひとえ)の着流しは、志鶴の手によるものだ。

これから、秋になる前に(あわせ)、冬になる前に綿入れの着物を仕立てるはずだった。
結局、初めて夫となった人には、浴衣(ゆかた)と単だけしか縫うことができなかった。

志鶴も今日は打掛は羽織らず、小町(ねず)の小袖だけの気軽な出で立ちだ。

小町鼠はほんのりと紅がかった白に近い鼠色で、夏のこの時期に着ると涼やかに見える。
透き通るほど真っ白な肌の志鶴に、よく映えた。

「北町小町」と呼ばれる我が身が「小町」と名のつく色をわざわざ(まと)うのは、あざといようで恥ずかしかったが。


……最後の日、なのだから。

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