大江戸ロミオ&ジュリエット

八丁堀の組屋敷から、上野のお山の(ふもと)にある下谷広小路までは、それぞれ駕籠(かご)に乗った。
だが、駕籠を降りてからは二人で歩いた。

たとえ祝言を挙げた夫婦(めおと)であっても、武家の男女が人前で肩を並べて歩くことは、はしたなきこととして(はばか)られた。ゆえに志鶴は、多聞の二、三歩後ろを歩く。

なのに、多聞は志鶴を引き寄せ、すぐ隣で歩かせようとする。

「……おめぇにそんな後ろを歩かれちゃぁ、この人混みの中で、はぐれっちまうぜ」

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