大江戸ロミオ&ジュリエット

突然、()ぎの間にいた、北町奉行所の妻たちの一人が叫んだ。


「や…やっと思い出してござりまするっ。
……『浮世絵与力』じゃっ」


今度は、大広間中の視線が、一気に多聞に集まった。

北町奉行所のだれもが目をいっぱいに見開いていた。

たとえ、糸のような目の持ち主であっても、生まれて初めて「黒目」と「白目」の境がはっきりと認識できた。

< 27 / 389 >

この作品をシェア

pagetop