大江戸ロミオ&ジュリエット

酒が廻って、足腰に力が入らぬ志鶴を抱きかかえるようにして、多聞は次の間へ続く(ふすま)をぱーんっと開けた。

座敷よりも何畳か狭い次の間には、障子窓がなかった。昼日中なのに、薄暗い。

そして、その真ん中には、色鮮やかな夜具が敷かれてあった。

志鶴は目を見張った。

やっと気づいた。

この(たな)が……「出合(であい)茶屋」だということを。

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