大江戸ロミオ&ジュリエット

「だ…旦那さま……」

口を開いた志鶴を、多聞は強引にくちびるを押しつけて遮った。

その口から……他の男のことなど、絶対に聞きとうなかった。

多聞は夢中で志鶴のくちびるを吸った。

志鶴はさような激しさに、すっかり脚も腰も砕けてしまって、多聞にしがみつくことしかできなかった。

志鶴の帯を(ほど)いて崩す。
蛇のような帯がだらり、と下に落ちた。
小町(ねず)の小袖の腰紐(こしひも)を引いて解く。
皮を剥くように小袖を脱がせ、下に落とす。

襦袢(じゅばん)と腰巻だけになった志鶴を、ようやく夜具の上に押し倒した。

互いの心の臓が早鐘を打つ。
多聞の息も、志鶴の息も、この上もなく上がっていた。

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