大江戸ロミオ&ジュリエット
「……痛いか、志鶴」
緩やかに動きながらも、多聞が荒い息で訊く。
「……うっ……っはっ……」
すでに、最奥まで押し挿れられていた。
顔を思い切り顰めた志鶴は、知らぬ間に多聞の腕を掴んで力を込めていた。
先刻までのふわふわした陶酔は消え去り、今や切り裂かれたような痛みの中にいた。
「……そうか……痛いか」
多聞は笑っていた。
いつもの「浮世絵与力」の不敵な笑みだ。
志鶴は信じられない目で、我が身を組み敷いている男を見上げた。
多聞も汗を滴らせているが、暑さのためだけで質が違う。志鶴の汗は、苦痛を伴う脂汗だ。
ひどい、と思った。
……先刻まで、あないにやさしかったのに。
志鶴の瞳に、じわりと涙が込み上げてきた。