大江戸ロミオ&ジュリエット

近頃、兄を訪ねて、島村 尚之介がよく顔を見せるようになった。

尚之介が生家の上條から島村の家に養子に入り与力と同心とに身分が分かれたゆえ、一時は疎遠になっていたらしいが、元は一番気の合う友である。交流は復活していた。

天高く澄み渡った秋空の(もと)、縁側で縫い物をしていた志鶴のところに、兄と尚之介が庭を横切ってやってきた。

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