大江戸ロミオ&ジュリエット
そのあとが大儀であった。
花婿側、次に花嫁側と、交互に祝辞を述べていくのであるが、必ず前の者より話が長くなり、終いには一人でたっぷり四半刻(約三十分)にも及ぶようになった。
さらに、今日の善き日を寿ぐための「高砂」の謡を、人生で一度きりのはずの祝言で「繰り返す」のは御法度のはずだが、双方の喉自慢が続々と登場して、しかも延々と同じ節を吟じ続け、もはや「絶対に負けられぬ合戦」と化していた。
だがその宴は、
「もうよいであろう。『これにて、一件落着』と参ろうか」
「御意でござる。『異議なし』」
と上機嫌で顔を見合わせた、互いの奉行の言葉で終わった。
というか、大上段からばっさり叩っ斬られた。
とても祝言とは思えぬ殺伐とした双方を、目の前で見ていたとは到底考えられぬほど、脳天気で無神経な「御白州裁き」である。
「北町」「南町」問わず、唖然としたのは云うまでもない。
にもかかわらず、上座に並んで鎮座する花婿の多聞と花嫁の志鶴は、一切動じることなく、粛々とその任をやりおおせた。