大江戸ロミオ&ジュリエット
その様子は、どこに間者を潜ませておいたのか、まだ祝言の最中なのに、もう仔細を伝える瓦版が刷り上がっていた。
早速、町家で読売が節をつけて呼び込みながら配るのを、往来の者たちが我れ先にと手を伸ばし、飛ぶように売れていく。
それから数日もしないうちに、弥生の「雛人形」の浮世絵が売り出された。
だれがどう見ても、男雛と女雛に扮した多聞と志鶴だった。衣装がまるで見てきたように同じだったのだ。
また、黄表紙「八丁堀敵恋行末」が世に出て、さらに翌月には早速その戯作が歌舞伎の演目となって上演された。
それらの人気は凄まじいものだった。