大江戸ロミオ&ジュリエット
流石に巷で「浮世絵与力」ともてはやされているだけあって、夜目にもすこぶる「いい男」である。
志鶴の兄の佐久間 帯刀も、北町のおなごたちから騒がれて、却って嫁取りを難しくしているくらいの器量だが、多聞には敵わないと云わざるを得なかった。
寝間の隅に置かれた行燈の仄暗い明かりが、余計にぞくっ、とした妖しい色気を感じさせる。
思わず、志鶴は俯いた。
頬がじわっと赤くなるのを隠したかった。