大江戸ロミオ&ジュリエット

俯いた目の端に、夜着が入ってきた。

志鶴が実家から嫁入り道具の一つとして持ってきた、色鮮やかな錦地の綿入れの打掛で、夫婦の掛け布団として支度されたものだ。

一気に、今夜、目の前のこのお方と同衾するのだ、という実感が押し寄せてきた。

知らず識らずのうちに、志鶴は膝の上に乗せた手を、ぎゅっ、と握りしめていた。

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