大江戸ロミオ&ジュリエット
「佐久間様、お待たせ仕った。
……お入りくだされ」
内与力の上條 広之進が座敷の中へ招じた。
彦左衛門は身につけた裃がずれていないかどうか確かめてから、膝を進めた。
「朝比奈 大隅守様、年番方与力、佐久間 彦左衛門にてござりまする」
座敷に入った彦左衛門は平伏した。
「おお、佐久間。此度は忙しいところ呼び立てして、かたじけのうござった……面を上げよ」
北町奉行の朝比奈 大隅守は鷹揚に云った。