大江戸ロミオ&ジュリエット

そのとき、ふと「あの方」の顔が浮かんだ。

……これがもし「あの方」との祝言であったならば。

この縁談が決まってからは……そして今日一日は特に、絶対に考えないようにしていたことだ。

だが。

その刹那、日本橋で見知らぬ年増の女と口を合わせていた姿も心によぎる。

思わず鼻の奥がつん、とした。

志鶴は「せんなきことを」と声なき声で呟き、無理矢理その目を閉じた。


……「三年」が始まった。

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