大江戸ロミオ&ジュリエット
◆◇ 四段目 ◇◆
◇南町組屋敷の場◇
朝が不得手な志鶴であったが、婚家で迎える初日に朝寝坊するわけにはいかない。
昨日の疲れもあってたいそう難儀したが、かなりの気力を振り絞って起き上がった。
ぼうっとした頭を一振りし、志鶴は身支度を始めた。手早く着物を着て帯を締めると、嫁入り道具の鏡台の前に座る。
鏡に映ったおのれを見て、はっ、となる。
眉を剃り落とし、お歯黒を付け、丸髷に結った髪の女がそこにいた。
……我が身だった。
まだこの身は男を通さぬ生娘だが、身なりは既に「人の妻」になっていた。