大江戸ロミオ&ジュリエット

公方(くぼう)(将軍)様や大名ならいざ知らず、江戸の者たちは武家であれ商家であれ「一汁一菜」が基となっている。

米の飯または(あわ)や芋などが混じった「かて飯」に、おみおつけの汁物、そして九十九里で捕れた「目刺し(いわし)」や品川や練馬村で獲れた「貝の剥き身の切り干し大根」などのお(さい)(惣菜)なんかが、一人ひとりの箱膳に支度される。

松波の家で支度された志鶴の膳は、奉公人たちと同じだった。

つまり、お菜がなく、米の飯とおみおつけと香物のみだったのだ。

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