大江戸ロミオ&ジュリエット

多聞から(ねや)に呼ばれぬとなると、同じ家に住んでおるにもかかわらず、顔を合わせることもなかった。

姿を見なくなって、幾日経ったことだろう。

そもそも、「夫」とは幾度()うたのか。
まだ片手で数えられるほどではないのか。

当然のことながら、人の妻になったはずの志鶴はまだ生娘であった。


……まさか、かような暮らしになろうとは。

< 64 / 389 >

この作品をシェア

pagetop