大江戸ロミオ&ジュリエット

昨夜以来、志鶴には「月の(さわ)り」が参っていたのだ。本来ならば、夫の(ねや)に参れるはずのない身体(からだ)であった。

……まさか、今宵に限って、かようなことになるとは。

そうこうしているうちにも、多聞の勢いがさらに増す。

志鶴の真っ白な羽二重の(せな)に回っていたはずの多聞の手が、片方だけいつの間にか腰の辺りを撫でているではないか。

今にも易く結ばれただけの細い帯を、するっと解きそうだ。

……なんとしても、今宵は駄目であるのに。

だが、しかし。

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