大江戸ロミオ&ジュリエット
志鶴も、仕出かしたことの重大さを、今さらながらに悟り、心の底から震えた。
多聞からの熱く口を吸われているときとは真反対の、凍えるような震えであった。
志鶴は寒さでがたがた歯の根も合わぬかのごとく震えていた。
武士が一番重んじるのは、表向きは「主君」であるが、その実は「体面」である。
ゆえに、「恥」に対してあれだけ忌み嫌うのだ。
そして、今宵、志鶴は確実に多聞に恥をかかせてしまった。
短気な夫なら、この場で妻を叩っ斬るであろう。