大江戸ロミオ&ジュリエット

「……おぬしは……かようなまでに、わしの妻にはなりとうないのか」

眉間に深いしわを寄せた多聞が、地を這うような低い声で唸った。

「も…申し訳ありませぬ」

志鶴はあわてて、額を畳に擦りつけて平伏する。

だが、もう遅かった。

「……もう二度と、わしの寝間に来るでない」


()てつくがごとく冷え切った多聞の声が、部屋に響いた。

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