大江戸ロミオ&ジュリエット

「……しぃちゃん……かように痩せてしもうて」

初音のぱっちりした大きな瞳が、みるみるうちに涙であふれてきた。

「はっちゃん……どうなされた。
……泣かないでちょうだいな」

志鶴は初音を安心させるために、にっこり笑おうとした。

だが、それは弱々しいものとなり、余計に初音の涙を誘うこととなった。


「……嫁いで早々に倒れるとは。
まさに、『嫁失格』にてござりまするな」

冷え冷えとした尖った声が飛んできた。

……富士の声であった。

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