大江戸ロミオ&ジュリエット

「玄丞先生……妻は大事には至らぬでござるか」

真剣な表情で、多聞は尋ねた。

夫の口から、初めて我が身のことを「妻」と聞いて、志鶴の頬がぽっと朱に染まった。

気づかれては恥ずかしいゆえ、志鶴はさらに俯いた。


「……まったく滋養が足りておらぬのと、月の(さわ)りが終わって血が足りておらぬゆえでござるから、心配するに及ばぬ」

玄丞はこともなげに答えた。

< 96 / 389 >

この作品をシェア

pagetop