イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
王子様は譲れない

 『ルトロワ』のパーティーの数日後、私は葛城さんのデスクワークを手伝うため、都内にある香月流の東京本部に出勤していた。


 ここ東京本部は十階建てのビルで、香月流会員の活動拠点となっている。

 一般会員向けの教室から、幹部会員研修のための道場、葛城さんが所属している業務統括のための総務所、講演用の大ホールに華展用の展示場、いけばな用品や書籍等を販売するショップ、幹部がいけた季節のいけばな作品を見ながらお茶や和菓子を楽しめるカフェまで併設されている。


 そして智明さんはというと、今日は一人で、以前作品を提供した映画の試写会の打ち合わせに出かけている。智明さんの不在を狙って、私は葛城さんに相談したいことがあった。


「お稽古、ですか」

「はい、どなたか先生をご紹介いただけませんか?」

 ウェディングプランナーになるという夢はひとまず置き、智明さんのアシスタントとして私にできることは何でもする。

 彼の香月流への想いを知った夜、私はそう決めた。

 そのためには、やはり一から香月流のいけばなを学ぶ必要がある。改めてそう考えたのだ。

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