イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「それでは今習ったことを活かしてお花をいけてみましょう」
先生の合図で、皆一斉に花を手に取る。
先生のお手本やテキストを見ながら、見ようみまねで花をいけていく。
長さを調節しようと花ばさみを入れた時は緊張した。
失敗したら取り返しがつかないものね。
無我夢中で花に向き合っていたら、稽古時間はあっという間に終わってしまった。
「はじめてのお稽古はどうでした?」
先生と一緒に生徒さんたちを見送り片づけをしていると、先生に話しかけられた。
「緊張しました!」
そう言って目を丸くする私を見て、先生は品の良い笑いを浮かべる。
いきものである花を扱う時の緊張感といったら半端なかった。
はさみを入れるときも、花を剣山に刺すときも、気づいたら私は毎回息を詰めていた。
「失敗はできないですし。なんでしょうね、少しお花がかわいそうという気持ちも芽生えてしまって……」
そのままでも美しく咲いている花をわざわざ摘み取ってきて、さらにはさみを入れたり、好きな形に枝を曲げたり、葉を抜き取ったり。自分の作品を作り上げるためにたくさん手を入れるのだ。
それはお稽古を通して花に触れてみて、初めて芽生えた感情だった。