イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「本当なら俺が見てやりたいけど、これからもっと忙しくなるし、実は結月の気遣いはとても助かる」
「あ、映画ですか?」
スケジュール表を確認したら、今週末あたりからプロモーションの仕事が入っていた。
全国の試写会場を回り、舞台挨拶にも参加するらしい。
「それに俺、今は教室持ってないしね」
「あれ、智明さんの受け持ちってありませんでしたっけ?」
先週のスケジュールに、本部での稽古も入ってたような……。気のせいだっけ?
「うん、今俺が見てるのは幹部のみ。一般会員用の教室も前は持ってたんだけど、希望者が殺到しちゃってやめたんだよね。入門希望者の対応で、本部がパンクしかけちゃって」
「そうなんですか!」
人気のいけばな王子直々に教えてもらえるんだもんね。
希望者が殺到しても仕方がない。
ふいに会話が途切れ、沈黙が続く。なんとなく気まずくて私はお抹茶で口を潤した。
「……智明さん、さっきのお話ですけど」
「ん?」とカップに口をつけたまま、智明さんが私を見た。