イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「さっきのって?」
「その、幽玄さまとの」
「ああ、見合いのこと?」
そう言って、優雅な手つきでカップを置いた。
「今に始まったことじゃないんだ。見合いの話は昔からあった。その度に言ってるんだけど、じいさんも聞く耳持ってくれなくて」
心底うんざりした顔で智明さんが言う。
智明さん、裏では幽玄さまのこと『じいさん』なんて呼んでるの?
幽玄さまが知ったら、卒倒しちゃうんじゃないかな。
「お見合いはしないんですか」
「うん、しない。結月も聞いてたろ。俺は愛のない結婚はしない」
よく考えたらずいぶんキザなセリフなのに、智明さんはさっぱりとした口調で言う。
智明さんの結婚観なんて、聞きたいような聞きたくないような……。
何か決定的なことを言われたりしたら絶対に傷つくくせに、……怖いくせに、知りたい気持ちの方が勝って、私は聞くことを止められない。
「……でも、きっかけはお見合いでも、ずっと一緒にいたら愛が生まれるかもしれないじゃないですか」
「そんなものに頼らなくても、運命の相手くらい自分で見つけるよ」
……すごい、自信満々だ!