イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
王子様は気がついた
ゴールデンウィーク直前の金曜日。
私たちは雑誌の対談企画で、都内の老舗ホテルの一室に来ている。
対談相手は今最も旬の女優、氷見彩華(ひみあやか)さん。智明さんも作品提供などで関わった映画の主役を務めている。
人気女優の取材ということもあって、用意されたのはプレミアムタワーフロアの最上階にあるスイートルーム。広さ百平米以上、窓の向こうには銀座の街が一望できる、なんとも贅沢な空間だ。
智明さんの用意を終え、部屋の隅に立ち氷見さんの到着を待っていると、部屋の入り口にいる葛城さんに手招きされた。
「どうされました?」
「結月さん、ちょっとお話が」
出版社のお偉いさんやカメラマンさん、雑誌の編集者さんたちでざわめく部屋を出て、葛城さんの後に続く。
廊下の突き当りまで進むと、ようやく葛城さんが口を開いた。