イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「ゴールデンウィーク以降のことなんですが、実は私は、出張で海外に行くことになっています」

「えっ、海外ですか?」

「はい。お家元の代わりに海外支部で開催される華展を回らなくてはなりません」

 葛城さん、秘書なのにそんな仕事まで任されてるんだ。すごいなぁ。


 でも、ちょっと待って! それって葛城さんがいない間、私が葛城さんの代わりを務めなくちゃいけないってことだよね?


「葛城さん、ちなみにどちらへ行かれるんですか?」

「上海から入って深圳(しんせん)、香港を回り最後はシンガポールへ。十日間ほどの予定です」

「えぇ、十日間も!?」

 私の不安を感じ取ったのだろう。情けない声を上げる私に、葛城さんは優しい目を向ける。


「大丈夫ですよ。結月さんなら安心してお家元のことを任せられます。お家元の舵取りも上手いようですし」

 そんなに私、智明さんに対して強気に見えるのかな? 相手はお家元なんだし、今後はもうちょっとわきまえよう。


「それともう一つ」


 えっ、まだ何かあるの?

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