イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「実は私も、ここでいけばなを習っているの。今までは週一回だけだったんだけど、夏までにどうしても師範の免状をもらいたくて、お稽古の回数を増やしていただいたの」

「そうなんですか」


 ただのお稽古なのにわざわざ着物姿? とも思ったけど、着物が好きで普段から着ている人なのかもしれない。

 もうすぐ師範代に手が届くということは、結構長い期間いけばなを習っているはず。聞けば松原さんは大学在学中から、香月流本部で学んでいると言う。


「すごいですね、もうすぐ師範だなんて」

「仕事をしながらだから思っていたよりも時間がかかってしまったけど。ずっと師範の免状をいただくことが私の目標だったから」

 そう言って、眩しいほどの笑顔を見せる。


 仕事だけでなく、趣味で始めたいけばなも極めようと頑張る松原さんを見ていると、私まで励まされる。

 教室の前でしばらく立ち話をしていると、次のお稽古の時間になったのか、葛城先生がやってきた。

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