イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 映画『花酔い』の公開日前日、午後七時。

 私と智明さんは会場となる六本木のシアターのロビーにいた。

 配給会社から依頼を受け、映画の中で使われたいけばな作品を智明さんがそのまま再現して、舞台挨拶当日来場されるお客様にご覧いただくのだ。


 展示作品は合計五点。すでに全てが智明さんの手でいけられており、残すは一番の大作『花酔い』の微調整を残すのみだった。


 先日、ふとしたことから智明さんと松原さんのことを知ってしまい落ち込んだけど、私はその後も変わらず、智明さんのアシスタントとして懸命に働いていた。


 他の仕事を探すことも考えたけれど、そうしなかった。

 二人のことを知っても私は智明さんが作り出す作品が好きだったし、香月流を守るために日々邁進する彼の助けとなりたかった。

 何より、私が智明さんのことを想う気持ちに変わりはなく、ただ彼のそばにいたいと思ったのだ。

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