イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「葛城はまだ?」
「あと五分ほどで到着されるそうです」
今日になって足りない花材が発生し、ひいきにしている花材店まで葛城さんが受け取りに行っているところだ。
「お家元、葛城さんが到着されました!」
中心となる久留米松の周りにウラジロを置き、つい今しがた葛城さんが持ってきたピンク色のアスターを散らす。
この作品は、波乱万丈の人生を生きたヒロイン水瀬響子の人生を象っている。
「……できた!」
すでにいけてあった他の花材とのバランスを調整して、ようやく作品が完成した。
作品数が多かったこともあり、今回のいけこみには数日要した。今日も会場入りしてから、すでに十時間以上経過している。
智明さんの表情にも疲労の色が濃い。
「お家元、片付けは私がやっておきますので、少し休んでください」
「いいの? 悪いけどそうさせてもらうね」
葛城さんに付き添いを頼み、私は余った花材や道具の片づけをはじめた。
ごみをまとめ、シアターの係りの人に聞いていた場所に出しに行く。
再び会場に戻ってすぐ、異変に気づいた。