イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 乱れてしまった久留米松の姿を整え、再度花をいけ終えた時には、もう日付けが変わっていた。


「できた……」

「できましたね」

 最初の仕上がりとは変わってしまったけれど、それでも所々枝を折られた松を使ったとはとても思えない、立派な作品が完成した。


 シアターの管理者に報告してくる、と席を外した葛城さんに代わって、トラブルを報告していた映画の配給会社にも連絡を入れる。


 電話を切ると、安堵のあまり私はへなへなと床に崩れ落ちた。

 予期せぬトラブルに見舞われ緊張感の連続だったし、長時間立ちっぱなしで働いたせいで、体はクタクタだ。

 でも私は、最後までやり遂げた達成感で気分が高揚していた。


「結月、ありがとうね。」

「そんな、私は何も」

 座り込んだ私の隣にしゃがみ、智明さんが視線を合わせた。

< 150 / 178 >

この作品をシェア

pagetop