イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「もう遅いので、ここのホテルを取りました。積もるお話もあるでしょうし、お二人でどうぞ」


 報告を終えて戻ってきた葛城さんは、作品の前に座り込む私たちを見て何かを悟ったらしい。

 スマホを手に一度姿を消した後、再び現れてそう言い放った。


 確かに、智明さんに聞きたいことは山ほどある。

 智明さんと同室、ということに若干気後れはしたものの、はっきりしておきたい欲求に負けて、私は智明さんと共に、ホテルの部屋に足を踏み入れた。


「どうする? 汗かいたし先にシャワー浴びる?」

「えっ!?」

 生々しい会話に、心拍数が上がる。


 同意して同じ部屋にしたんだから、そういうこともあるかもしれないとは思ったけど……。やっぱりまだ心の準備ができてない! 無理だよ、どうしよう!


「いや、そういう意味じゃないから安心して。疲れてるし、このまま寝ちゃっても大丈夫なのかなって思っただけだから」

 一人でぐるぐる考えているのがわかったんだろう。智明さんは苦笑まじりにそう言った。


「そういうことはまたゆっくりね」

「えっ」

 艶っぽい笑みを見せる智明さんとまともに目を合わせられなくて、両手で顔を隠した。


「ゆーづき、こっち見て。俺に訊きたいことがあるんでしょう?」

 顔を塞いだ両手を呆気なく外される。

「……はい、あります」

 と頷くと、「さ、話して」と智明さんが頭を撫でた。

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