イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「結月」
「はい」
ふざけた雰囲気が一気に消えて、智明さんの瞳が真剣さを増す。
「俺のこと、信じてくれた?」
泣き続ける私の頭に片手を載せると、ポンポンと優しく撫でる。
「……はい」
「よかった」
心からホッとしているってわかる、穏やかな笑み。
その笑顔を見て、また私は涙が溢れた。
ああ、私も同じだ。
やっぱり私も、智明さんがいい。
この気持ちをちゃんと智明さんにも伝えなきゃ。
「智明さん」
「ん?」
「……私も、智明さんのことが大好きです」
泣きじゃくる私を見て破顔すると、智明さんは私をギュッと腕の中に抱きしめた。
「それで?」
「それでって、それだけだよ!」
「なんだぁ、王子って以外に奥手なのね。それともお楽しみは後に取って置くタイプ?」
「……そこは、紳士って言ってあげて」
それから二週間ほど経った土曜日。
夏休みをあと一カ月後に控え、職場の繁忙期を目前にした恵美が「恵美ちゃんを励ます会をやって!」というので、久々に待ち合わせて飲みに出かけた。