イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 あの夜を境に、私と智明さんは恋人同士になった。

 家でボーっとテレビを見てる時に、画面に智明さんが現れたりすると、やっぱり夢なんじゃないのかな、とも思うけど。


「でもあの結月が、家元の奥様にねー」

「ちょっと、まだそこまでは……」

「いやー、ホント人生ってわかんないわ」

 恵美、人の話を全く聞いてない。


 智明さんの作品を壊した犯人は、あの後すぐ判明した。

 翌日の舞台挨拶の後に、智明さんの楽屋を訪れた氷見さんが全て話してくれたのだ。

 やはり、あの時私が嗅いだ香りは、氷見さんの香水の残り香だった。

 智明さんは「大事にしたくはないから」と氷見さんを一切責めなかった。

 智明さんの言葉を聞いて、氷見さんはその場に泣き崩れた。


「でもさ、今は恋人だとしても、智明さんも結婚を急かされてるんだし、そう遠くないうちにそういう話になるでしょ。結月は、どうするの」

「どうするって?」

「ウェディングプランナーだよ」

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