イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
ああ……、と頷きながら大きめのウィンナーにフォークを刺す。
実は智明さんも、そのことで悩んで、なかなか私に気持ちを伝えられずにいたらしい。
香月流の家元である智明さんとつき合うようになれば、私の夢はどうしても遠のいてしまうから。
「でもね、もうそこはきっぱりしてる。私は智明さんのお手伝いをしたい。夢を諦めたんじゃなくて、私の夢が変わったの」
「そっか、そっか」と言いながら、笑みが私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「よかったね、結月」
「うん!」
父が倒れてからずっと、恵美には心配をかけ通しだったから、こういういい報告ができて私も本当に嬉しい。
「家元の奥様になっても、たまには私と遊んでね」
「だから! まだ気が早いって!」
その夜は、結局これの繰り返し。
二人ともお酒がすすみ過ぎて、翌日は二日酔いで大変だった。