イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「結月!」
智明さんに肩を叩かれて、父の顔を覗く。ゆっくりと目蓋が開き、長い間眠っていた父が目を覚ました。
……信じられない。本当に、目を覚ましてくれた。
父の上に身を乗り出し、「父さん!」と叫ぶ。まだ焦点の合わない瞳が私を映し、続けて隣にいる智明さんを映した。
「結月、ナースコール」
「はい!」
震える手でボタンを押す。二人涙でぐしゃぐしゃのまま、父の顔をもう一度覗き込んだ。
「圭吾さん……おはよう。気分はどう?」
智明さんの言葉が、父に届いているかはわからない。
私はまだ信じられなくて、現実だって確かめたくて再び智明さんの手を取った。
「圭吾さん、起きた早々で悪いけど、覚悟してね。俺も結月も、圭吾さんに話して聞かせたいことがたくさんあるんだ」
父が倒れた後のことを話して聞かせたら、父はどんな顔をするだろう。
きっと父が想像もしていなかった未来が、ここにある。
「……良かった。本当に良かったな、結月」
「はい」
繋いだ手から、智明さんの温もりが伝わってくる。
智明さんがいれば、私はどんなことでも乗り越えられる。
智明さんにとっての私も、そうであったらいいな。
智明さんの手をギュッと握り、私は私もまだ知らない未来に想いを馳せた。
Fin