イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「心配しなくていい。着替えは用意してもらえるし、ここはアメニティも十分揃ってる。今日着ていたものは明日の出発に間に合うよう、クリーニングしてくれる」

「……でも智明さん、お仕事は?」


 いくらスケジュールには余裕があるとはいえ、今は花展前の大事な時期だ。色々なことを決めなくてはならないのに、家元である智明さんが不在で本当に大丈夫なのかな。


「緊急性の高いものはないし、何かあったとしても葛城にカバーしてもらえるよう手を打ってきた。心配はいらないよ」

「……本当に?」

「ああ。たまには誰にも気兼ねしないで、二人でゆっくりしよう」

 玄関に向かってゆっくりと歩を進めながら、智明さんがそう話してくれる。


 ……本当に、いいのかな? 

 仕事や本部のことが気にならないわけではないけど、忙しい智明さんが時間を作ってわざわざ京都まで連れて来てくれたんだもの。

「そうですね、一緒に楽しみましょう!」

 私がそう答えると、智明さんは満足そうに頷いた。


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