イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
王子様の裏の顔

 肩下までの髪をバレッタで一つにまとめ、鏡を覗いてメイクの最終確認をする。

 視覚的にも扱う花の邪魔をしないようにと選んだのは、上下グレーのパンツスーツ。

 現場を走り回ることを覚悟して、足元はローヒールのパンプスにした。


 洗面所を出て、キッチンの冷蔵庫から作り置きの麦茶を取り出してグラスに注ぐ。

 一口飲んで、カウンタ―に置いていた雇用契約書を手に取った。


 昨夜帰ってから見返した契約書の内容は、驚くほど条件のいいものだった。

 羽根木さん自身も言っていたけど、父のことをずいぶんと考慮してくれている。

 子どもの頃からの夢は遠のいたけど、別にこれで終わりじゃない。

 今日からの経験が役立つ日も、きっといつか来ると思う。

 そして羽根木さんのアシスタントをやるからには一生懸命やると、一晩のうちに覚悟を決めた。

 初日から役に立てるとは思ってないけど、せめて今日は足手まといにはならないようにしたい。

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