イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「そろそろ行かなきゃ」

 昨日テレビ局からの帰りに買ったいけばなの入門書と羽根木さんの著書を鞄に入れ、玄関に向かう。

 シューズボックスの上の鍵に手を伸ばした時、スマホが鳴った。

 ……羽根木さんだ!


「はい、藤沢です」

『おはよう、まだ出てない?』

「ちょうどこれから出るところです」

 パンプスに足を突っ込みながら答える。こんなに早くなんの用事だろう?


『間に合ってよかった。葛城を迎えにやってるから』

「えっ、迎えってどういうことですか……きゃっ!?」

 慌てて玄関ドアを開けた先に、葛城さんが立っていた。


「おはようございます結月さん。お迎えに上がりました」

 そう言って、恭しく頭を下げる。


『あ、葛城着いたみたいだね。そういうわけだから、また後でね』

「ちょっと、羽根木さん!!」

 構わず通話を切ってしまう。なんてマイペースな人なの!

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