イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「葛城さん、父と羽根木さんの間にいったい何があったんですか?」

「申し訳ありませんが、私からはお答えすることはできません」


 目的地に着いたらしい。パーキングに車を停め、ギッ! と音を立てて葛城さんがギアを引く。

 その音が、言葉よりもはっきりとした拒絶のように感じられた。


 父と羽根木さんのことは、葛城さんでもそう簡単には触れられないほどデリケートなことなのかな……。

 葛城さんの口から聞き出すことは諦め、シートベルトを外す。


「行きましょう。もう間もなくお家元も到着されます」

「はい」


 父と羽根木さんとの関係を、ちゃんと私は知ることができるのだろうか。

 羽根木さんの方から話してくれるのを待つしかないのかな?


 なんとなくもやっとした気持ちのまま、私は葛城さんの後に続いた。

< 50 / 178 >

この作品をシェア

pagetop