イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「葛城さん、父と羽根木さんの間にいったい何があったんですか?」
「申し訳ありませんが、私からはお答えすることはできません」
目的地に着いたらしい。パーキングに車を停め、ギッ! と音を立てて葛城さんがギアを引く。
その音が、言葉よりもはっきりとした拒絶のように感じられた。
父と羽根木さんのことは、葛城さんでもそう簡単には触れられないほどデリケートなことなのかな……。
葛城さんの口から聞き出すことは諦め、シートベルトを外す。
「行きましょう。もう間もなくお家元も到着されます」
「はい」
父と羽根木さんとの関係を、ちゃんと私は知ることができるのだろうか。
羽根木さんの方から話してくれるのを待つしかないのかな?
なんとなくもやっとした気持ちのまま、私は葛城さんの後に続いた。