イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「お疲れさまです!」
内心ひやひやだったけど、松原さんを見習って笑顔で頭を下げた。
女性は一瞬呆気に取られたあと、気まずそうに会釈を返して出て行った。一気に肩の力が抜ける。
今の女性の感情は私に向けられたものだったけど。
今後私の態度、応対一つで羽根木さんに敵を作るってことにもなりかねない。気をつけよう。
羽根木さんに視線を移すと、もう目の前の作品に没頭している。
今の私には、直接羽根木さんをアシストすることはできないけれど。
せめて彼が、周りの雑音を気にすることなく仕事に集中できる環境を作るのが私の仕事だ。
自分のやるべきことが、ようやく見えてきた。
少しずつ、ほんの少しずつだけど、羽根木さんのアシスタントとしての道が開けてきた気がする。
真剣に花を選ぶ羽根木さんを見ながら、私は体中に力がみなぎっていくのを感じていた。