イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
王子様の孤独
『ルトロワ』オープニングパーティー当日。
私は葛城さんら手渡された加賀友禅の着物を前に大変困惑していた。
「これ、なんですか?」
「結月さん用のお着物です。時間があまりありませんので、早くお仕度なさってください」
いつものようにマンションまでお迎えに来た葛城さんに連れて来られたのは、青山にある有名サロン。
よくファッション誌にも載っているので、私も名前だけは知っているお店だ。
葛城さんに引っ張られてお店に入ると、着付けからヘアセットにメイクまで、ばっちり私の名前で予約が入れられていた。
「どうして私まで? パーティーには出ないんだから必要ありませんよね」
今日だって裏方に徹するつもりで、パンツスーツで家を出て来たのに。
「いえ、結月さんも香月流の一員として出席していただきます」
「えぇ!? そんな、無理ですよ」