イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「遅かったね」

「準備に手間取ってしまって。申し訳ありません」

 お家元より遅れて来るなんて、アシスタント失格だ。

 数時間前、葛城さんの前でごねた自分を大いに反省した。


「うん、やっぱり俺の見立ては正しかったな。よく似合ってる」

「え、このお着物お家元が選んでくださったんですか?」

 毎日あんなに忙しくしてるのに、いつそんな時間があったんだろう?

「そうだよ。藤沢気に入ってくれた?」

「……はい、とっても」

 最初はあんなにパーティーに出席することを渋っていたけど、着物を着せられた途端全てが吹っ飛んだ。

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