イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
羽根木さんが選んでくれた着物は、黄色がかった白から薄紅色へとグラデーションが広がる優しい色合いのもの。
風に舞う藤や桜の絵が美しく、決して豪華な柄ではないけれど、一目見て心惹かれるものがある素敵な着物だ。
ちょっと苦しいけど、着物を着ると背筋が伸びる。
いつもとは違う自分に慣れたような気がして気分も高揚する。
「こんなに素敵な着物が着られて嬉しいです。ありがとうございます」
「それプレゼントするから、大事にしてね」
「えっ、無理です!」
「なにが」
とっさに言い返した私を、苦虫を噛み潰したような顔で見る。
あっ、やばい。この顔は、私をテレビ局に呼びつけた時と同じだ。